LITALICO社長の著書『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の書評・要約を知りたいな。
こんな、声におこたえします。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』は、LITALICO社 社長の長谷川敦弥氏の著書です。
長谷川氏は、ご自身がADHD(注意欠陥多動性障害)という特性をもちながら、苦労の末、現在LITALICO社の社長をつとめている方です。
<LITALICOのビジョン>
会社のビジョンは「障害のない社会をつくる」
<LITALICOの事業内容>
・LITALICOワークス
・LITALICOジュニア
・LITALICOワンダー
・LITALICO発達ナビ
・LITALICO仕事ナビ
・LITALICOキャリア
・LITALICOライフ
・LITALICO研究所
どの事業も「障害のない社会とつくる」というビジョンに基づいた運営がされています。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の基本情報
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の基本情報についてみていきます。
書名:『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』
著者:長谷川 敦弥(はせがわ あつみ)
監修者:野口 晃菜
発行所:SBクリエイティブ株式会社
著者の長谷川 淳弥氏のプロフィールはこちらです。
長谷川 敦弥(はせがわ あつみ)1985年生まれ。2008年名古屋大学理学部数理学科卒業。2009年8月に株式会社LITALICO代表取締役社長に就任。「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げ、障害のある方に向けた就労支援サービスを全国58ヶ所、発達障害のある子どもを中心とした教育サービスを全国70教室、小・中学生にプログラミングを教える「IT×ものづくり」教室や、子育て中の親に向けたインターネット・メディアも展開。幼少期の教育から社会での活躍までワンストップでサポートする独自の仕組みを築いている。同社は、従業員数1500人、年間役3万人の応募を集める就職人気企業に成長。2016年3月、東証マザーズに上場。企業理念は「世界を変え、社員を幸せに」。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』
本書の構成は次の通りです。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の要約・まとめ
各章ごとに簡潔にめとめます。
第1章 ADHDは僕の強み
”僕はADHDなんだ!” と自分自身のことを告白。
苦労した幼少期。
幼稚園から毎日のようにクレーム電話がかかってきたこと、それでも伸び伸びと育ててくれた家族の愛情深い様子がリアルに描かれています。
みんなとの違いに苦しんだ中学校生活。
人生の転機をくれたのは、バイト先の焼肉屋のオーナー夫妻でした。
そのストーリーは、人が人に与える影響の大きさを改めて感じさせてくれます。
ADHDとは、大昔の「狩猟民(ハンター)」の生き残りが持っている特性だとする「ハンターファーマー仮説」を取り上げ、ADHDが現代でもプラスに働くことについて語っています。
また、起業家の多くがADHD傾向をもっているということも、事実をみてきた長谷川氏の言葉で重みが増しています。
「学校は、広い世界のほんの一部でしかない」という言葉には、教育者であった自分はつい、ホッとしてしまいました。
それは、学校教育の不完全さは指摘しつつも、それを否定してしまうのではなく、共に歩んでいくという心が感じられるからです。
第2章 子どもが一番の先生だ!
周囲から見る「困った子」は、実は「困っている子」という視点の変換。
教室を飛び出してしまう本人が一番、困りごとを抱えていた。
その事実に気づかせてくれます。
「みんな違っている」ことを当たり前の前提にして、一人ひとりに合った学び方を探していけるような教室として「LITALICOジュニア」を運営している、その意味はここにあったのです。
「スキルマップ」という分類表を活用して、一人ひとりに合ったオーダーメイドの教育を実施している様子が、実際に教室に通う子どもの成長をとおして紹介されています。
「優れた教材プログラムかどうかは、理論や研究が決めるのではなく、目の前のお子さんが決めることなのです。」
発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。p86より
「子どもたちが一番の先生だ!」というこの章のタイトルを説明した言葉です。
試行錯誤を繰り返しながら、目の前の子どもに合わせたプログラムづくりを続ける、LITALICOジュニアの姿勢が現れた言葉です。
第3章 子どもの心に火をつける
子どもたちの創造性を育む教室として立ち上げた「LITALICOワンダー」という「IT×ものづくり」の教室について語られている章です。
「ロボット界のオリンピック」に出場したツムギさんは、ロボット作りに熱中することをとおして、苦手だったコミュニケーション力を伸ばすことができました。
「枠からはみ出る子が輝ける場所」
LITALICOワンダーは、学校教育の枠からはみ出た子どもたちが輝ける場所であり、ヒーローやヒロインになれる場所としての思いを語っています。
LITALICOワンダーについては、
【発達障害とプログラミング】LITALICOワンダーがおすすめな理由を徹底解説
という記事にまとめてあるので、ぜひこちらもお読みください。
第4章 「多様性」を力に変えていく働き方
この章では、働くことに障害のある方のための就労支援を行なっている「LITALICOワークス」について、実際の利用者の話をベースに語っています。
印象的な言葉は
ちょっと常識を疑って、環境を変えてみれば、「障害」は障害ではなくなる
引用:本文P110より
これは、苦手を得意に変えたタムラさんの話です。
また、子どもたちに大人気のミウラさんは、アニメやゲームに関する膨大な知識を自分の強みと認識することで、順調にステップアップを続けているとのこと。
実例に基づきながら、個性を生かして働いていくことの大切さを教えてくれます。
第5章 障害のない社会を作る
「障害のない社会をつくる」というLITALICOの目標を達成するために必要な「大きな力」として3つあげています。
①ビジネスの力
②技術の力
③みんなの力
①ビジネスの力
公共のサービスではなし得ないことを、実施していく力として「ビジネスの力」をあげています。
そのビジネスの力で立ち上げた事業が、逆に公的なサービスにいい意味で影響を与えてきているのです。
また、オランダでできた「スティーブ・ジョブズ・スクール」の例をあげながら、多様な学校を次々を誕生させたという思いも語っています。
「LITALICO発達ナビ」というプラットフォームを立ち上げたことで、生まれた新しい選択肢も、このビジネスの力によるもの。
②技術の力
ビジネスの力と同じようにダイナミックな影響力を持つのが「技術の力」である、とし、目の動きで文字を入力する装置である「アイトラッカー」や一人乗りのコンパクトな移動機器「WHILL」などの技術を紹介しています。
また、人口知能で自殺やいじめを予防する取り組みについては、実際にLITALICOワークスで役に立った事例も示されています。
③みんなの力
累計10万人以上がLITALICOの求人募集に応募してくれたことや、2015年に設立した「LITALICO研究所」にも「サポート研究員」として数百名ものエントリーがあったことなど、多くの人たちの力が集まってきていることについて述べています。
政策提言や社会運動をやって感じたこととして、社会を変えていくためには、「みんなの力」が必要であることにも言及しています。
具体例としては、3万人以上の署名を文部科学大臣に手渡したときの様子が示されています。
人はちがう。それでいい。そこからはじまる。
が最終章の締めくくりの言葉です。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の書評
続いて、『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』の書評をご紹介します。
書評① 周囲から見る「困った子」は、実は「困っている子」という見方
書評② 「多様性」を力に変えていく働き方
解説していきます。
書評① 周囲から見る「困った子」は、実は「困っている子」という見方
著者が自身のこととして語っているADHDに限らず、発達障害についての詳しい認知は進んでいるとはいいがたいと思います。
それは、一般社会の話だけでなく、肝心の教育現場ですら正確な情報がいきわたっているかといわれると、教育現場にいた私でさえ確信はもてません。
「困った子」は、実は「困っている子」という、言葉の上では小さな違いだけど、社会のみんなで共有できたらどんなに素敵なことだろうと思ってしまうのです。
「困っている子」と認識すれば、もっともっと手を差し伸べる大人は増えるのではないでしょうか。
書評② 「多様性」を力に変えていく働き方
障害者雇用促進法によって、民間企業で2.2%、国や地方公共団体で2.5%の障害者の雇用義務が示されてはいます。
もちろん数値で示すことも大切だけど、じゃあその方たちがそれぞれの職場で幸せに働いているのでしょうか?
受け入れた職場の方たちがしっかりと理解をして、仲間として受け止めているのでしょうか?
これからの時代、今ある職業のかなりの部分は新しい仕事や働き方に置き換わっていきます。
そんな時代だからこそ、著者の言うように「困りごと」を抱えた人たちも、その多様性を力として発揮していけるような方向に社会が発展していってほしいと感じてしまします。
多様な子どもたちの育ちを、多様な大人たちの働き方を変えていく力を持っているのが、著者の長谷川氏であり、その思いを十分に伝えてくれているのが本書だと思います。
こんな人に読んでほしい
正直なところ、この本はすべての人に読んでほしい、そう思います。
でもあえて、この人にと言われたら
・発達障害のお子さんを抱えるお父さん、お母さん
・発達障害の子どもを教える先生方
・教育に携わる全ての人たち
この方たちですね。
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』を読んでほしい理由
理由は2つあります。
理由① 周囲から見る「困った子」は、実は「困っている子」という見方を誰もが身につけてほしいから。
実は「困っている子」だったという事実を知り、自分の考え方を変え、ほんの少しでもいいから行動を変えることのできる大人が増えたら、きっともっともっと生きやすい社会になることは確実。
それは、発達障害の「ある・なし」だけの問題ではなく、人間性そのものが成長することだから。
理由② 発達障害に限らず、人それぞれの多様性を生かすチャンスが生まれるから
人は誰でも個性を持っています。
その個性をうまく活かせる人もいれば、その個性に押しつぶされ、幸せな生き方を選べない人もいるはず。
本書は、発達障害のことをベースに書かれてはいますが、発達障害も一つの特性としてとらえるなら、ここに書かれていることは、すべての人たちに生きていくはずです。
実際、私自身も自分の特性について捉えなおすいい機会となりました。
その特性をどう生かして、これからの人生を生きていくのか、そんなことにも思いが膨らんでいきます。
じゃあどうする? まとめ
『発達障害の子どもたち「みんなと同じ」にならなくていい。』のまとめと書評は以上です。
いかがでしたか?
著者からのメッセージ性がとても高い本です。
発達障害に関わる、関わらない、ではなく、すべての方々に読んでほしいと私自身、願ってやみません。
コメント