『ころべばいいのに』の【あらすじ・感想】ヨシタケシンスケ著

ころべばいいのに014 図書室(書評など)

独特の作風をもつ ヨシタケシンスケさんの『ころべばいいのに』をご紹介します。

『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作 【あらすじ】

「わたしには きらいなひとがいる。 なんにんか いる。」

というショッキングなセリフを呟きながら、放課後、学校から自宅への帰路につくのでした。
頭の中で思い浮かめているのは、お母さん、友達、先生・・

「みんな いしにつまずいて ころべばいいのに。」

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出典:『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作

そんな嫌いな人たちのことを考えていると自分のことも嫌になってきて、そんな時間がもったいないとも思う。

そんな嫌いな人たちをやっつけるのは頭の中。手で潰したり、お腹を痛くしたり・・ハチを操って頭のまわりを飛ばせたり。

時には発想の転換をして、こんなことをしてみてはどうかと考える。

「はこをかぶって、なかで すっごいヘンなかおをする」

「れいぞうこの ドレッシングをふる」

嫌なことを「あめみたいなものだとしたら」と考えて、避難場所を作ることを思い浮かべ、潜水艦や地面の中での隠れ家生活を想像してみたり、逆に雨に濡れることを楽しんだり。
でも、

「あめだとしたら いつか かならず やむものね。」

と主人公の女の子の顔も少し穏やかになるのです。

嫌なことがやってきたときのために思いついたのは、「はげましセット」。

「おいしいボックス」
「かわいいボックス」
「おもしろいボックス」
「きもちいいボックス」

いろんなものが、嫌なことで傷ついた自分を励ましてくれるのです。

嫌な気分って

「からだのそとがわに くっついていくものなのかな。」

と考え、ジタバタするととれるものなのかな?と考えたり、大人にも嫌いな人がいることに気づいたり。

「もしかしたら」と考えた仕組みは、「アイツ」という一つ目小僧の仕業。自分が得をするために、関係ない人を操って

「ためいきマネー」
「いかりマネー」
「かなしみマネー」

を稼いでいるというもの。そして、集めたお金で「アイツ」が買うのは

「かなしみ わたあめ」
「ためいき ホットドッグ」
「いかり やきしば」
「にくしみ ソーダ」

いろいろ考えているうちに「アイツ」のことが許せなくなってきました。

そして「アイツ」を喜ばせるのは悔しいからと考えたことは自分の好きなこを探したり、楽しい気持ちで布団に入ったり、すてきな人と一緒に「アイツをきらおう!」と盛り上がったりすること。

アイツを嫌うパワーを使って考える世界は、笑顔いっぱいの楽しい世界。

学校からの帰り道にこんなことをずっと考えていたけど、家に着く頃には、嫌いな人がいてもいい、どうするかは自分で決められるのだから、と前向きな気持ちになるのでした。

※「カッコ」内は本文より引用

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『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作 【感想】

学校の正門を出る時に「わたしには きたいなひとがいる。なんにんか いる。」とつぶやく女の子の姿はやはり印象的ですね。

「みんな いしにつまずいて ころべばいいのに。」なんて言い出したときには、読んでいてもちょっと悲しくなってしまいます。

でも、大丈夫、この女の子の発想はとても面白く、その解決方法も奇想天外。

何より救われるのは、ヨシタケシンスケさんのかわいいイラスト。

可愛さとリアルさとユーモアが同居したイラストが、辛い本心を伝えつつもどこか読者をホッとさせてくれるのです。

「ああ、だれかを にくんでいるじかんが もったいない!」というセリフはどちらかというと大人の発想。

このセリフを読んだ子どもは、人を憎むことの無意味さをちょっと学んでくれるといいななんて感じました。

何でもないことや、誰かの一言で急に気持ちが戻ることを客観的に感じるのは、当に大人の感覚。つい「あるある」と心の中でつぶやいてしまいます。

辛い時に女の子が呼び出した「はげましセット」は、大抵の大人が自分を励ますために持っているなと、思いっきり共感。

「おとなにも きらいなひとは いるんだね」と、たくさんの大人にくっついた「アイツ」のイラストをみていると、あー自分にも結構くっついてるなと、心の中で苦笑い。大人は誰も「アイツ」と共存しながら暮らしているのだなと実感するのです。

最後の方で、「アイツ」はこんなヤツと解説しているページがまた面白く、人の嫌がることを記録するためのメモ帳が出てくるのですが、これがなんとなくヨシタケシンスケさんが普段イラストをメモしている手帳にみえてくるのです。

最後には自分なりに結論を出し、「ただいまー。」と自分の家の玄関を開ける女の子。学校も門を出てから家に着くまでの道のりの中で、空想の世界を漂いながら、最後には自分なりに納得して玄関を開けられてホッとしました。

子どもの心にもたくさんある負の感情をテーマに、ヨシタケシンスケさんの繊細さがあるからこその問題提起であり、ヨシタケシンスケさんのユーモアがあるからこその解決策なのだなと、つくづく感じるお話でした。

子ども向けの絵本なのに、なんだか大人の自分に向けて書かれているような気になってしまう、そんな絵本ですね。

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『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作 【本の概要】

題名:『ころべばいいのに』
作者:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
発行日:2019年6月25日

『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作 【作者紹介】

著者:ヨシタケシンスケ

1973年神奈川県生まれ。筑波大学凱学院芸術研究家総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化美術賞、『このあと どうしちゃおう』で第51回新風賞、『もう ぬげない』でボローニャ・ラガッツィ賞特別賞など、数々の賞を受賞し、注目を集める。

絵本に『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』『このあと どうしちゃおう』『もう ぬげない』『こねて のばして』(ブロンズ新社)『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)『あるかしら書店』(ポプラ社)『それしかないわけないでしょう』(白泉社)などがある。2児の父。

出典:『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ作
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じゃあどうする? まとめ

ヨシタケシンスケさんの絵本が大好きで、本屋に行くと必ず絵本のコーナーで足を止めます。

子どもの絵本としても評判ですが、私自身は大人の絵本かな、と思っています。

きっと大人のファンも多いことでしょう。

さてさて、手元にはまだ何冊もヨシタケシンスケさんの絵本があるので、少しずつ紹介していきますね。

『ころべばいいのに』プロモーションビデオ

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