大人の成功哲学の本などを読むと、信念を持つことの大切さを目にすることが多いかと思います。
そもそも「信念」とは何か?そして信念のある子どもを育てるにはどうしたらいいのか?
どんなことに気をつけたらいいのか?
そんなことについて今回は、29年間の教師生活をとおして、学校現場で出会った子どもたちのことを思い浮かべながらまとめてみました。
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信念とは
しん‐ねん【信念】
引用元:デジタル大辞泉(コトバンク)
1 正しいと信じる自分の考え。
「信念を貫き通す」「固い信念」
2 宗教を信じる気持ち。信仰心。
ここに引用したように、信念には大きく2つの意味がありますが、今回の記事では1の「正しいと信じる自分の考え」の方についてまとめていきたいと思います。
この引用からわかるように、信念とは自分で正しいと信じていることなので、理論的にまたは科学的に正しいこととは、ズレがあることもあります。
そんな一面も含め、子どもにとって「信念」を持つことがどのように大切で、どうしたら育むことができるのでしょう。
まずは、信念と成功との関係について説明したいと思います。
信念と成功との関係
成功哲学の書物を読んでいると、「信念」の大切さについて述べていることを目にすることと思います。
例えば、有名な成功哲学の本「思考は現実化する」(ナポレオン・ヒル著)のなかでは次のように表現されています。
” 信念は願望実現の原動力である”
引用元:『思考は現実化する』(amazon)
「サッカーの試合に勝ちたい」「ピアノのコンクールで1位をとりたい」などと子どもが思ったとき、「勝てる」「1位をとれる」という強い思いを持ち続けることが大切ですよね。
「どうせダメだ」と諦めたら実現できませんよね。
その「勝てる」「1位をとれる」という強い思いを持ち続けることこそが、子どもなりの「信念」を持つということなのではないでしょうか。
だからこそ、どんなことでも成功させようと思ったら、しっかりと信念を持つことが大切なのです。
信念のある子どもを育てる3つのポイント
さて、それではどうしたら「信念」を持った子どもを育てることができるのでしょうか?
まず、大切なのは、いきなり子どもに信念を持たせようと力むのではなく、信念の基礎を築くんだという少し力を抜いた感覚が大切なのだと思います。
ここでは、3つのポイントについてお話したいと思います。
①小さなことでも自分で決める
②自分の意見を持つ
③自分の考えを発信する
①小さなことでも自分で決めさせる
信念の基礎を築くためには、普段の生活のなかで小さなことでも、自分で考えさせて、自分で決めさせてあげることが大切です。
なぜなら、自分で決めるということは、自分の考えを持つことが前提にあるからです。小さなことでも自分で決めさせることで、しっかりと自分の考えをもって行動できる子どもに育ててあげるということになるのです。
例えば「塾に行く前に宿題やっちゃいなさい!」などと、時間を効率よく使うために、親なら当然言いたくなりますよね。
でも、ちょっと我慢して、「塾に行く前に時間があるけど、宿題はいつやる?」と聞いてみてはどうでしょう?
子どもなりに優先順位を考えて、宿題をやるかもしれないし、買ったばかりのマンガの本を先に読むかもしれません。でも、子どもに決めさて、そのとおりにやらせてみることも大切です。
もしかしたらマンガを先に読んだことが原因で、宿題を忘れて先生に叱られるかもしれません。でも、自分で決めたということが、自分から反省し、成長するための種になり、それを積み重ねることで、「信念」の基礎を一つ築くことができるのです。
だからこそ、小さなことでも「自分で決める」ことを大切にしてあげることが必要なのです。
②子どもの意見を大切にする
小な子どもでも、自分の思いや考えを持っているものです。ときにはこだわりのようなものもありますが・・。そんな思いや考えを、パパやママが尊重し、一緒に考えてあげることがとても大切です。
なぜなら信念は「○○はこうだ、こうあるべきだ」という自分の思いを信じることです。したがって信念を持つためには、まず、自分の考えを持つことが前提になるのですね。だからこそ、子どもの意見を大切にすることが、重要になってくるのです。
例えば「僕はサッカーが最高のスポーツだと思うんだよね」などと子どもがいったとします。親としては、いろんなスポーツがあってそれぞれに良さがあることはわかっています。
でも、まずは子どもなりに自分の考えをもっているということを大切にしてあげてはどうでしょう。その上で、「何でそう思うの?」とそのわけを聞いてあげて、場合によっては他のスポーツのことなどにも話題を広げていってあげるといいのではないでしょうか。
一番、いけないのは無関心でいること。子どもが自分の考えを持ったときにスルーしてしまうことです。
ぜひ、どんな小さなことでも、子どもが自分の思いや考えを伝えてきたときには、そのことをしっかりと受け止めて大切にしてあげるといいですね。
③自分の考えを発信させる
子どもの性格ににもよるのですが、自分の考えを発信する機会をできるだけ持たせてあげることが大切です。
なぜかというと、自分の考えを心の中に持ったとき、その考えを外に向けて発信することで、周りの友達や両親からいろいろな意見をもらうことができます。ときには反論もあることでしょう。そうしたことの積み重ねこそが、正しい信念を持つための基礎となっていくからです。
例えば、学校での友達同士の喧嘩について「○○くんのいっていることの方が正しいと思うんだけど、どうかな?」などといってくることはありませんか?そんなときこそチャンス!思いっきり自分の考えを吐き出させてあげましょう。
たとえ親の目から見て間違ってるなという内容でも、まずは受け止めて、思いを発信したことの素晴らしさを褒めてあげましょう。内容の修正はそのあとでゆっくりと。
子どもが自分の考えを話し始めたら、それは信念の基礎をつくるチャンスだと思って大切にしてあげましょうね。
子どもなりの信念をもった子どもの5つの特徴
子どものうちから、しっかりとした信念をもって行動しているということは、あまりないと思います。
でも、子どもなりの「信念の元」のようなものをもちながら、暮らしている子どももいるものです。
そんな子どもにはどんな特徴があるのでしょうか?私が長年の学校現場で見てきた子どもたちの姿を思い浮かべながらまとめてみますね。
①行動力がある
②言葉と行動に一貫性がある
③周りに振り回されない
④決断が早い
⑤友達の意見をしっかり聞ける
①行動力がある
信念があるなと感じる子どもをみていると、何かと行動に移るのが早く、自信をもって物事を進めることができます。
その理由としては、自分の価値基準をある程度もっている子どもは、行動に移るときの迷いが少なく、結果として行動力のある姿として現れてくるのではないかと考えます。
クラスで問題が発生したときなどに、友達を助けたり、話し合いをもったりという行動にすぐに動けるのは、日頃から信念を持っているなと感じている子どものことが多いです。
正しいと信じる自分の考えを持った子どもに、行動力があることは、十分にうなづけることではないでしょうか。
②言葉と行動に一貫性がある
信念をもっていると、日頃の発言や行動に一貫性を感じます。
それは、発言や行動の元になっている価値観がしっかりとしているので、何かをいうとき、行動するときに、必ずその価値観に立ち返ることができるからだと思います。
例えば「いじめは悪いことだ」という思いを持った子どもがいたとします。その思いが強くてしっかりとしていたら、いじめられている仲間を助けることもするだろうし、話し合いではきっといじめをなくすために必死に意見を言うことでしょう。
自分の信じる考えをしっかりと持っていればいるほど、言葉と行動には一貫性が見られるようになるものですね。
③周りに振り回されない
自分の考えをしっかりと持ち、それを信じていると、周りの仲間たちがどんな行動や発言をしようとも、自分は自分と周りに振り回されずに、強い気持ちでいられるものです。
それは、自分の中にある考えに自信があり、周りがいろんな立場でいろんな意見を言っていたとしても、それは自分と違う、自分はこうだという軸があるためだと考えられます。
高学年の担任をしているときに、交通ルールをしっかり守るように親からいわれ、自分自身もそれが正しいと強く思っている子どもがいました。他の仲間たちが横断歩道の無いところで一斉に道を渡っても、自分はそうせずに、少し遠回りをしてでも交通ルールを守って横断歩道を渡ることができていました。
自分が信じることへの思いが強いと、周りに振り回されずにいつも同じ行動をとることができるのですね。
④決断が早い
信念を持っている子どもの特徴の一つとして、決断がはやいなと感じることがよくありました。
やはり、自分の考え方の基準がはっきりしているので、他の子どもに比べて迷うこと少ないこのが理由の一つではないでしょうか。
先ほどの例に挙げた子どものように、交通ルールは守るべきものという強い思いがある子どもにとって、車が一台も来ていないときの赤信号でも、それを守るか無視をするのかという判断に時間はかからないはずです。
⑤友達の意見をしっかり聞ける
自分が正しいと思うような考えをしっかりともっている子どもは、相手の意見をしっかりと聞くことができます。
なぜなら、自分の考えをしっかりと持つことの大切さを認識しているので、同時に相手の意見も尊重しようとする思いが生まれるからです。
実際に学級会などの話し合いの場面では、自分の意見をはっきりということと同時に、たとえ反対意見が出たとしても、頭から否定するのではなく、その意見のいいところや改善点などを冷静に考えながら話し合いに参加することができています。
信念を持っている子どもは、自分の意見をしっかりと持つと同時に友達の意見も尊重し、耳を傾けることができるのですね。
親が気をつける4つのこと
信念を持つことの大切さについては、確かなことだと思います。では、どんな信念でもいいのか?というと気をつけた方がいいこともあります。
ここでは、次の4つについお話したいと思います。
①信念の方向性に注意
②こだわり過ぎは禁物
③柔軟性とのバランスを大切に
④信念という軸の元を作る時期と考える
①信念の方向性に注意
一言で信念といっても、プラス方向のものとマイナス方向のものがあるので、その向きには要注意です。
信念は、”正しいと信じる自分の考え”と、一番最初に引用しましたが、あくまでも自分の考えなので、プラス方向のものだけではないのです。
例えば、自分は何をやってもダメだ、できない人間だと信じ切っていた場合、それは「自分はできない」というマイナスの信念を持っていることになってしまいます。
「できる」と「できない」どちらも信念になり得るということなのです。
だからこそ、子どもがどんな考え方をもっているのか、どんな思いにこだわりがあるのか、そのことをよく観察して、その子に合ったプラスの信念を育てるように、日頃から気をつけてあげることが大切なのです。
②こだわり過ぎは禁物
何かにこだわるということは、信念を持つ上でも大切な感覚だと思います。
でも、こだわり過ぎてしまうとただの頑固になってしまいます。
子育てのなかでこだわりを感じたとき、それはチャンスでもあり、気をつけるところでもあります。
物事にこだわる気持ちも大切に認めつつ、違ったもの、違った考え方の良さも示しながら、柔軟な考え方をバランスよく身に付けさせてあげたいものです。
③柔軟性とのバランスを大切に
②のこだわりのところでも書きましたが、柔軟性の大切さもしっかりと子どもに教えてあげることが大切です。
子どもなりの信念を持つことは、とても大切なことですが、変化がますます大きく、速くなっていく時代を生きていく子どもたちにとっては、変化に対応していく柔軟性も大切です。
変えてはいけないものと、変わるべきものの両方をしっかりと見極めるためにも、柔軟性とのバランスはますます大切になっていくことでしょう。
④信念という軸の元を作る時期と考える
「信念という軸の元」それは子どもなりの価値観といってもいいでしょう。そのような子どもなりの価値観が、実際にでき始める時期だということを意識しておくことが大切です。
子どもたちは、両親や先生といった周りの大人たち、そして友人たちの価値観に触れながら、自分なりの価値観をつくっていきます。
子どもが成長していく時期は、信念という軸の元を作っていく時期ともいえるでしょう。
例えば、「友達に優しく」といつも語っている両親に育てられ、学校でも「友達に優しく」を大切にする教師に出会い、実際に自分のことを大切にしてくれる友達に囲まれて育ったとしたら、その子のなかには「友達に優しく」という価値観が自然と備わっていくことでしょう。
逆の感覚も同じことです。
だからこそ、子育ての時期は、信念の元になる子どもなりの価値観を作る時期だと思って、子どもへの声かけや接し方を大切にしてほしいのです。
じゃあどうする? まとめ
子どもに信念を持たせるというと、「まだ早いのでは?」などと思ってしまうかもしれませんね。
でも、信念は大人になってから自然と湧いてくるものではありません。
子どものころからその種はすでに芽を出し始めているのです。
子どもたちが充実した人生を歩んでいけるように、よりよい信念を持てるように、周りの大人たちが意識してあげることは、とても大切ではないでしょうか。
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