「GIGAスクール構想」という言葉を聞くことがたまにあるのですが、一体それはそんな学校をイメージしてるのでしょうか?
そして、子供たちの授業は何か変わるのでしょうか?
という疑問におこたえします。
<本記事の内容>
● GIGAスクール構想とは?教育に関心のあるお父さん向けに一言でいうと!
● ポイントは「児童生徒に1人1台端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」
● GIGAスクール構想の実現に向けた【5つの柱】
● GIGAスクール構想で学校はどう変わるの?
● じゃあどうする? これからの子供たちの姿
私は教育現場で、ICTの担当として機器の導入等に関わってきたり、実際の学校現場では、導入された機器を使った授業を体験してきました。
今回の記事では、そのときの経験を生かしながらまとめてみました。
よかったら私のプロフィールもご覧ください。
2019年12月19日 文部科学省がGIGAスクール実現推進本部を設置
2020年4月7日 萩生田文部科学大臣が記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、GIGAスクール構想の早期実現をめざして支援の推進を表明
GIGAスクール構想とは? 教育に関心のあるお父さん向けに一言でいうと!
GIGAスクール構想とは、義務教育を受ける全ての子供たちのために、1人1台のPCと高速ネットワーク環境などを整備する5年間の計画です。
その目的は、子供たち一人一人の個に合わせた教育の実現にあります。
さらに、教職員の業務を支援する「統合系校務支援システム」の導入で、教員の働き方改革につなげる狙いもあります。
※ GIGA:Global and Innovation Gateway for All
ポイントは「児童生徒に1人1台端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」
GIGAスクール構想におけるポイントは2つ。
1つは「児童生徒に1人1台の端末」、そしてもう1つは「高速大容量の通信ネットワーク」です。
これらをどのように整備し、どのように活用していくのか、そして何がどのように変わっていくのか、とても興味のあるところです。
まずは、この2つのポイントについて、文部科学省の調査結果を数字とグラフでみてみましょう。
児童生徒に1人1台の端末
2023年度までに、小学校1年生から中学校3年生の児童生徒に1人1台の学習用端末を整備するということですが、現状と自治体間の格差をみてみましょう。
<現状(全国平均)>
・教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数 5.4人/台
<自治体間の格差>
・普及率トップ 佐賀県 1.9人/台
・普及率最下位 愛知県 7.5人/台
パソコンの普及率は全国平均で 5.4人に1台。
5〜6人のグループ活動の時で1台使えるといった状況ですね。
実際には40台程度のタブレット等をキャビネットに格納して、それをガラガラと移動させながら、いくつかの教室で共有するといった運用が多いのではないでしょうか。
私の勤務していた学校では、キャビネットを職員室に置いておき、予約表に予約した上で、使用するクラスが移動させて使っていました。
このような移動用のパソコンと、従来からのパソコン室にある固定されたPCとを合わせて計算した台数です。
高速大容量の通信ネットワーク
通信ネットワークについては、高速大容量の通信ネットワークを整備するということですが、総務省との連携のなかで「ローカル5G」という運用方法の検討もされているということ。
この「ローカル5G」という運用方法によって、光ファイバーの普及が進んでいない地域や、5Gの商用基地局がない場所でも利用が可能になるとのことです。
とはいえ、現状は次のような状況です。
<現状(全国平均)>
・インターネット接続率(30Mbps以上) 93.4%
・インターネット接続率(100Mbps以上) 69.1%
<自治体間の格差>
・接続率トップ 富山県、大阪府、兵庫県 100%
・接続率最下位 山梨県 70.4%
パソコンやタブレットの台数が増えるのはいいことなのですが、子供たちが一斉に動画を観だしたらどうなるのでしょう?
実際に私が行政で学校ICTの担当をしていたときには、PCの利用が集中しやすい時間帯には、動画の再生が厳しい状況でした。
しかも、それは1人1台というようなレベルではなく、児童生徒用のPCはパソコン室のみという状況での話です。
グラフおよびデータの出典
平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)
GIGAスクール構想の実現に向けた【5つの柱】
「GIGAスクール構想の実現パッケージ〜令和の時代のスタンダードな学校へ〜」という文部科学省の資料をみてみると、大きく5つの柱から構成されていることがわかります。
その5つの柱について要点をまとめてみました。
<5つの柱>
● 環境整備の標準仕様例示と調達改革
● クラウド活用前提のセキュリティガイドライン公表
● 学校ICT活用ノウハウ集公表
● 関係省庁の施策との連携
● 民間企業等からの支援協力募集
環境整備の標準仕様例示と調達改革
各自治体が業者に発注する際の仕様書の例を文部科学省が例示したり、都道府県レベルでの共同調達を推進して価格を抑えようとしたり、今までにはみられないところまで踏み込んでいます。
クラウド活用前提のセキュリティガイドライン公表
クラウドの活用を進めると必ずセキュリティの問題にぶつかりますが、そのガイドラインを改訂して、整備の硬直化を避ける方向性を示しているところが新しいですね。
セキュリティで固めるというより、クラウドの活用を進めるために、必要以上に強固にしがちだったセキュリティ対策を現実に即して見直した感じです。
学校ICT活用ノウハウ集公表
ハード面の整備に合わせ、実際の授業で活用しながら子供たちに指導をしていく教職員がすぐに使えるようにと、「教育の情報化に関する手引き」を公表し、その中でICTを効果的に活用した学習活動の例を提示しています。
「教育の情報化に関する手引」(令和元年12月)
第1章~第3章 (PDF:7.6MB)
第4章~第8章 (PDF:7.2MB)
巻末資料 (PDF:2.5MB)
関係省庁の施策との連携
総務省と連携した「ローカル5G」の活用や、経済産業省と連携した「EdTech」の導入実証事業など、様々な省庁との連携をはかりながら「GIGAスクール構想」を推進していくというものです。
【ローカル5G】
ローカル5Gは、自治体等が自らの敷地・建物内に5Gの通信網を自前で構築することを可能とするもの。これにより、商用基地局がない場所でも需要に応じた利用が可能となり、あわせて機能のカスタマイズ化も可能。
「GIGAスクール構想の実現パッケージ」より
【EdTech】
Education(教育)×Technology(科学技術)を掛け合わせた造語。AI、 IoT、VR等のテクノロジーを活用した革新的な能力開発技法。
「GIGAスクール構想の実現パッケージ」より
民間企業等からの支援協力募集
民間企業等からの学校ICT導入や利活用に対するあらゆる協力を募るという取り組みです。
具体的には、校内LANなどの通信環境を無償で提供してもらったり、十分なスペックの端末を新品・中古問わず子供たちに提供してもらったり、ICT支援員など人的なサポートをしてもらったり、というものです。
GIGAスクール構想で学校はどう変わるの?
GIGAスクール構想が実現したとき、学校はどのように変わるのでしょうか?
私たちが受けてきた教育とどのように違った教育が実践されるのでしょうか?
学校の様子の変化を「子供たちの授業の様子」とそれ以外の「先生たちの仕事の様子」に分けてまとめてみました。
子供たちの授業の様子
学校の様子の変化を3つの学習のスタイルに分けてお伝えします。
● 一斉学習:先生対子供たち全員
● 個別学習:一人一人の学習時間
● 協同学習:グループ学習の時間
それぞれの学習スタイルにおける変化
一斉学習
◯ 教師は授業中でも一人一人の反応を把握しやすくなる
→ 子供たち一人一人の反応を踏まえた、 双方向型の一斉授業が可能に
今までの一斉学習では、電子黒板やプロジェクターで大きく写しながら、子供たちの興味関心をひきつけつつ授業を進めることはできました。
こうした授業では、子供たち一人一人の理解度などは、教師側から把握することが難しく、反応のいい子供たちを中心に授業が進んでしまうこともありました。
それが、デジタル教科書などの普及によって、一斉授業のなかでも一人一人の子供たちの思いや、理解度などをリアルタイムで先生が把握しながら授業を進めることができるようになります。
ただ、先生の高いICT活用能力が求められることも事実ですね。
個別学習
◯ 子供たちが同時に別々の内容を学習できる
◯ 子供たちの学習履歴が自動的に記録される
→ 一人一人の教育的ニーズや、 学習状況に応じた個別学習が可能に
今までの個別学習では、プリントが配布されたり、あらかじめ購入してあるドリルなどを一斉に行うことが多かったので、課題はほぼ統一されたものでした。
そして、その進み具合を教師が把握するためには、授業中に教室の中を歩きまわり、それぞれの子供たちに声をかけながら把握していました。
また、学習のあとにプリントやノートを回収して、放課後や家に持ち帰って、確認していました。
それが、AIドリルなどが発達・普及すると、課題は全て個々の子供たち用にカスタマイズされたものになることでしょう。
その進み具合は全て先生の端末上で確認できるようになるので、客観的に子供たちの様子を把握できるようになります。
協同学習
◯ 一人一人が記事や動画等を集め、独自の視点で情報を編集できる
◯ 各自の考えを即時に共有し、共同編集ができる
→ 全ての子供が情報の編集を経験しつつ、 多様な意見にも即時に触れられる
今までは、グループごとにタブレットなどを使って発表していたので、どうしても発表する子供が限られてしまい、おとなしめの子供は黙ったままというケースが多くありました。
1人子供が1台の端末を持った状態での協同学習では、グループごとに活動をしながらも、個人の考えを全体の場(大きな画面上)で共有できるので、大勢の前での発言が苦手な子供でも、自分の意見を発信しやすくねりますね。
文部科学省が作成したプロモーション動画です!
「学校における1人1台端末環境」公式プロモーション動画
先生たちの仕事の様子
放課後の仕事の様子
◯ 職員会議 → ペーパーレス
◯ 評価 → 校務支援システムの導入でデータの安全な管理が可能
◯ 教材研究 → インターネットやクラウドの有効活用で、場所に縛られずに教材研究に取り組める。
私が勤務していた学校では、職員の数が多かったので、職員会議用の資料を印刷してそれを配布するだけでも、かなりの時間がかかっていましが、教職員1人に1台のパソコンが配布されてからは、職員会議もペーパーレス化が進み、印刷・配布にかけていた時間を省くことができました。
校務支援システムは中学校では導入されていましたが、小学校ではこれからというところだったので、そのありがたみは感じることができなかったのですが、災害のことなどを思うと、耐火金庫での保存よりクラウド上でのデータ管理の方が、今の時代では安全なのだと思います。
処理作業については、慣れてしまえば以前のスタイルには戻れなくなることは間違いないと思います。
帰宅後の仕事の様子
◯ ノートやプリントの持ち帰り → クラウド上で子供の学習の様子を把握することが可能
◯ 評価のためのデータの持ち帰り → クラウドのデータに安全にアクセス可能データの持ち帰りのリスクなし
先生の仕事はとにかく自宅への持ち帰りの仕事が多いので、USBメモリなどを使わずに、クラウド上でデータを扱えるのはとてもありがたいことです。
以前は子供たちの情報を保管したUSBメモリを紛失してしまい、処分される先生も少なくなかったですからね。
じゃあどうする? これからの子供たちの姿
文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」そのGIGAについてもう一度みてみましょう。
GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略。
すなわち、学校を「全ての子供たちにとって、グローバルで革新的な人材になるための入り口」に変えていく構想なのです。
つまり、これからの学校は、「国際的に活躍できる人材」や「新しい価値を創造していく人材」を育てられるような教育を行う場にしていくということ。
そして、大切なことは「for All」の部分。
全ての子供たちに同じ機会が与えられること。
これからの子供たちは、ICTを文房具のように扱い、新たな仕事を当たり前のうように創り出していく、そんな姿を求められているのですね。
この記事をなすさんがご紹介してくださいました。
ありがとうございます。
とっても嬉しいです!
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