『欲が出ました』の【あらすじ・感想】ヨシタケシンスケ著

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独特の作風をもつ絵本作家 ヨシタケシンスケさんのエッセイ集『欲が出ました』のあらすじと感想、そしてぜひ読んでいただきたい人などについてまとめました。

絵本とは違い、作者が普段考えていることや価値観などに触れることのできる本です。

ヨシタケシンスケ著『欲が出ました』 あらすじ

はじめに

この本は前作『思わず考えちゃう』の第2弾という位置付けです。前作が思いの外ご好評をいただけたことをうけ、出版社の方々に欲が出たようで、第2弾が制作されたという訳です。

出典:『欲が出ました』P2

という位置付けで、タイトルもその流れのとおり。この本の位置付けは「エッセイ」そして、テーマは「欲」ではありますが、一つひとつのエッセイは特に欲にこだわっている訳ではありません。

それでは、あらすじということで、各章ごとにいくつかピックアップしながら、簡単なあらすじをご紹介していきます。

第1章『家でも、外でも欲が出ました』

とにかくエッセイ!
見開きに1つのエッセイのペース。
この章は21のエッセイからできています。
それぞれのタイトルを並べてみます。

・欲が出た時の顔
・人間が午前中にやってしまいたいこと
・ニャーウ・トイレットペーパーの袋
・もうネ、それだけで15%
・表面にうかんでいるイロイロ
・感謝を促す係
・なぜまくいかないのか
・だってホラ本人だもの
・引力の強すぎるものには近づかないようにしています
・サァ!今日も元気に顔色をうかがっていこっ!
・欲しいものシリーズ
・肯定係。そのままでいいのよ
・人間は平なところが好き
・途中まで完璧だったんスよ
・実際にいいたいことがなくても
・人類よ。
・人生において大事なことは
・心にはめる軍手
・植物のように与えられる光と水の通りに
・必要なところだけじゃまなものをどける
●スケッチコーナー①

そのエッセイも日常の一コマを切り取って、ヨシタケシンスケさんらしい解釈で語っているその言葉が「そうそう、あるある」と笑いながらも心に刺さる、そんなエッセイばかり。

その中でも、グッときたエッセイのあらすじを2つほどご紹介します。

『サァ!今日も元気に顔色をうかがっていこっ!』
というエッセイ。
社会人のやっていることとして綴っている。まさに痛いところをついている感じがたまらないのです。タイトルから十分に言いたいことが伝わってきますね。

『心にはめる軍手』
軍手をはめると、それだけでいろんなものを平気で触れる不思議さから、心にはめる軍手があったらな、というお話。

外の世界と自分の心の間にクッションのようなものがあれば、もっと楽に苦手な人のことも考えられるんじゃないか。

このエッセイを読むと、ヨシタケシンスケさんの繊細な心に触れたような気持ちになり、作者との距離がとても近づきます。

章末にはイラストコーナー46のイラストが8ページに収められているのですが、1つのイラストとそのイラストに付けられた一言を噛み締めると、ヨシタケシンスケさんの思いが伝わってきて、十分に1つのエッセイになっていくとともに、自分なりの解釈ができるので、あたかも自分が短いエッセイを書いているかのような気にさえしてくれます。

第2章『親子そろって、欲が出ました』

第2章は、ヨシタケシンスケさんの日常でのお子さんとの関わりのなかから切り取った一場面を鋭く、というかうゆるく語っているエッセイです。

まずはタイトルを並べてみます。

・期間限定
・ハイチュウたべていい?
・大きなものを持つと
・イスカンダル
・そんなことが楽しいのか
・オッパイ・やさしくそーっとひっぱると
・おなかがパカーッてなって、しんでもいいから
・あの日にまつわるアレコレ
・正しいかどうかではなく、「気がすむ」かどうか
・ボク、1回、まっぷたつになったことあるんです!
・これはきな・フーセンをふくらませて
・うまーくゴマかる大人になりたい
・よごれても丸洗いできます!
●スケッチコーナー②

いくつかエッセイのあらすじをご紹介します。

『やさしくそーっとひっぱると』
この世界のいろんなところに、しっぽが出ていると、世の中の面白いことや世界の秘密ようなものの端っこを見つけることを楽しみにしているヨシタケシンスケさんの観察眼。

しっぽは相手を知ることの入り口。幸せのなり方や、辛いことの忘れ方のようなものも、そういうしっぽの先についていると。そんなしっぽ探しを楽しみ、エッセイにまでしてしまうところが筆者の想像力の面白さ。

『これはきな』
下の子のズボンを替えるというちょっとした場面の中に見え隠れする、奥さんへの気遣い、というか微妙な上下関係。そんな関係を子どもの反応から読み取ったエッセイです。

第2章のスケッチコーナーは、セリフが少なめ。そのかわり、絵そのものから伝わってきます。この章では、子どもがメイン。親子のあるある場面を鋭く、そしてほっこり切り取ったものばかり。

第3章『朝から晩まで、よくが出ました』

第3章を構成しているエッセイのタイトルはこんな感じです。

・以下のコンテンツを視聴するにはやさしさが必要です
・まちがいには2種類ある
・わー! イライラしてきた!
・どこまでなら失敗してもいいですか
・キミの一部がほしいんだ
・すべての死は早すぎるか遅すぎるのだ
・すごく好きはすごくきらいになっちゃうかもしれないから
・アーヤとフーヤ
・「考えてみよう!」っていうのは
・ボクを選ばなかったことを
・自分を肯定できないならば
・北欧の人たちはどんな暮らしにあこがれているのかしら
・「仕事は、愛だ」というとそれっぽいけど
・そーなんですけどネー
・知りたくないことは
・行かないでぼくの興奮
・重力ターン
・今までで一番明日が来てほしくなかった日
・「その問題に一番興味の無い人々の視点」
●スケッチコーナー③

『どこまでなら失敗してもいいですか』
失敗を怖れるヨシタケシンスケさん、小さい頃からそうだったのですね。
「自分の子どもに失敗してもいいんだよって、言いたいし、言ってもらいたい」という言葉の後半部分に著者らしい本音が出ています。失敗の許容範囲を事前に確認できたらなあ、というお話。

『「考えてみよう!」っていうのは』
考えるということとオナラをすることの共通点を発見したヨシタケシンスケさん。考えることって、結構、オナラをすることと同じアプローチができるのではというエッセイ。

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ヨシタケシンスケ著『欲が出ました』 感想

欲が出ました006
出典:『欲が出ました』

イラストもエッセイのお話もとても面白いのですが、ゲラゲラ笑い転げてしまうような面白さではなく、「じわー」っとくる面白さと、「そうそう」という共感の面白さと、「なるほど」という納得の入り混じったなんともいえない感じ。

まさにそれがヨシタケワールドなのかなと感じてしまいます。どうしたら、こんな感覚で物事を見ることができるのだろう?どうしたら、物事をこんなふうに表現できるのだろう?と、不思議に思ったり、うらやましく思ったり。

きっと、それは、ヨシタケシンスケさんの持つ、やさしさや観察力、表現力の賜物なのだろうなと思います。ヨシタケさんの言葉やイラストをとおして、自分と向き合うことのできる素敵な本です。

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ヨシタケシンスケ著『欲が出ました』を読んで欲しい人

この本を読んで欲しい人は

「ホッとしたい人」

最近、なんだか行き詰まってるななんて、思い悩んでいたり、育児に疲れたななんて、落ち込んでいたり、そんなときに読んでもらいたい本だなと感じます。

ヨシタケシンスケさんは絵本作家ではありますが、この本は、ヨシタケシンスケさんのたくさんのイラストとそれにまつわる思いなどが綴られらエッセイ集なので、鋭くそして優しい言葉に触れながら癒されてほしいなと思います。

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ヨシタケシンスケ著『欲が出ました』 本の概要

書名:『欲が出ました』
著者名:ヨシタケシンスケ
発行所:株式会社新潮社
発行日:2020年7月15日

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ヨシタケシンスケ著『欲が出ました』 作者紹介

著者:ヨシタケ シンスケさんの紹介です。

1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究家総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化美術賞、第8回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。『りゆうがあります』で第8回MOE絵本屋さん大賞第1位、『もうぬげない』で第9回MOE絵本屋さん大賞第1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。「このあと どうしちゃおう』で第51回新風賞をうけるなど数々の賞を受賞し、注目を集める。近著に『あるかしら書店』『ヨチヨチ父』『おしっこちょっぴりもれたろう』『思わず考えちゃう』『もしものせかい』等がある。2児の父。

出典:『欲が出ました』

じゃあどうする? まとめ「あらためてヨシタケさんのファンになりました」

ヨシタケ シンスケさんの絵本が大好きで、たくさん読んで楽しんでいるのですが、この『欲が出ました』のようなエッセイは、ヨシタケシンスケさんが日頃考えていることに触れることができ、あのなんとも言えない表情のイラストの根底にある思いに触れることができるので、ヨシタケファンには絶対におすすめの本です。

子どもに絵本を読み聞かせをするにしても、子どもに絵本を買ってあげるにしても、著者の人柄に触れることで、その絵本の持つ価値がグッと上がるはずです。

読み終わったあとに残る、じわじわくる感覚がたまりません。

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