生活の一部というより、脳の一部と化していると言ってもいい過ぎではないスマホの存在。
大人たちはその危険性についてある程度知りつつも、我慢できないのが現状だと思うのです。
ただ、一番怖いのはその危険性に対する知識を全く持たないまま、身体を蝕まれてしまう子どもたち。
今回は、『スマホ脳』の要約をしつつ、子どもへの影響や、子どもたちを守るためにどうしたらいいのか、まとめてみました。
ぜひ一緒に考えてみませんか?
『スマホ脳』の要約
10章からなる『スマホ脳』ですが、ポイントを5つに絞ってできるだけ簡潔にお伝えしたいと思います。
①現代に適応できない人類の仕組
②スマホは最新のドラッグになった
③SNSを使うほど孤独になっていく
④バカになっていく子どもたち
⑤ハックされてしまうことへの対応策
①現代に適応できない人類の仕組み
人類が進化の過程で得た機能は今も狩猟時代のままなので、現代のスマホ時代には適応できていません。
それは、進化には膨大な時間がかかるの対し、スマホなど社会や技術の変化のスピードは、進化とは比べものにならないほど早かったからなのです。
例えば、餓死する心配がないのにも関わらず、お菓子売り場の前に立ったときに「お菓子が食べたい!」という激しい欲求に襲われるのも、狩猟時代の体の機能が働いてしまうから。
また、ネガティブな感情がポジティブな感情にまさるのも、人類が脅威から逃れるために必要だったからということです。
ですから、人類が現代社会に遺伝子レベルで適応できていないことは、ある意味当然のことだといえるのです。
②スマホは最新のドラッグになった
私たちにとってスマホは最新のドラッグになってしまった。すなわち、私たちの多くは気づかないうちにスマホ中毒になってしまったというのです。
それは、スマホの通知が、脳内の報酬物質と呼ばれるドーパミンの量を増やすように刺激するからなのです。通知が届くと、スマホを見たいという衝動が起きるのは、体の仕組みによるものだったのですね。
こんな話が載っています。
私たちは1日に2600回以上スマホに触り、平均して10分に1度スマホを手にとっているというのです。さらに3人に1人は、夜中に少なくとも1回はスマホをチェックしているとのこと。
これこそ、中毒症状といえるのではないでしょうか。
そして、街に出れば、カフェやレストラン、バスの中、夕食のテーブルまで、どこを見回してもスマホを見ている人ばかりなのですから。
冷静に考えてみても、私たちにとってスマホはある種のドラッグになってしまっていることは確かなようですね。
③SNSを使うほど孤独になっていく
SNSで20億人と繋がることも可能なのに、SNSを熱心に利用している人たちの方が孤独を感じていることが分かったということです。
「私たちはSNSによって自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかしそれは現実の社交にはならない」と研究者たちは結論づけているとのこと。
それについて筆者は、「皆がどれほど幸せかという情報を大量に浴びせられて、自分は損をしている、孤独な人間だと感じているようだ」といっています。
フェイスブックとツイッターのユーザーの3分の2が「自分はダメだ」と感じたり、インスタグラムの若者ユーザーが「インスタグラムのおかげで自分の容姿に対するイメージが悪くなった」と感じているとのこと。
こうしたことから、SNSで多くの人とつながっていうるようでいても、かえって孤独感や劣等感すら感じてしまっているということらしいのです。
④バカになっていく子どもたち
子どもたちのスマホ利用を野放しにしておくと、子どもたちはバカになってしまう、と筆者はいっています。
なぜなら、スマホは子どもたちの脳にさまざまな悪影響を及ぼすからです。
例えばどんな悪影響かというと
・遊びの減少
・報酬を我慢できなくなる
・睡眠時間の減少(睡眠障害)
・精神不調の急増
などです。
子どもたちがスマホにのめり込むほど、これらの悪影響を強く受け、バカになってしまうというのです。
逆にスマホの利用を制限することで、学力を向上させた学校の取り組みも紹介されています。
⑤ハックされてしまうことへの対応策
スマホによってハックされてしまう脳。バカになっていく子どもたちを救うための対応策として、デジタルデトックスと運動について説明したいと思います。
<デジタルデトックス>
まずこの言葉から
”うちでは、子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している。”
引用元:『スマホ脳』
ー スティーブ・ジョブズ(アップル社創業者)
iPhoneやiPadを創ったその人がいっているのです。
スマホやSNSには、人を依存症にさせる仕組みが備わっていて、我慢する力が未発達な子どもへの影響はより大きいということです。
例えばアメリカの大学生たちへの実験では、SNSの利用時間を1日30分に減らすことで、精神状態の改善がみられたとのこと。
また、デンマークの実験では、丸1週間利用を止めたところ、人生に満足を感じ、ストレスが減り、自分の周りの人たちと「顔を合わせる」時間が増えたということです。
したがって、ジョブズの言うように、スマホなどのデジタル機器の利用時間を制限することは、子どもだけでなく大人にとっても、大切なことだということです。
<運動>
デジタル情報の洪水に溺れそうになっている今、対抗策としては運動は最善の方法だと言っています。
その理由として筆者は、先祖が身体をよく動かしていたからだと述べています。狩をしたり、敵から追われたりしたときに、最大限の集中力が発揮されるように脳が数百万年かけて進化してきたからだということです。
スエーデンの取り組みでは、授業前の運動のおかげで、子どもたちはよく学び、態度も落ち着き、集中できるようになり衝動的な行動も減ったということです。
また、別の調査では、集中力の改善はADHDの子どもに顕著だったという結果も紹介されています。
したがって、散歩、ヨガ、ランニング、筋トレとあらゆる種類の運動が、知能によい効果を与えるということです。
『スマホ脳』から見える子どもへの影響
本書で取り上げられている子どもへの影響を3つにまとめてみました。要約のところで書いた内容と重複する部分もあります。
①睡眠時間の減少
②報酬を我慢できなくなる
③精神不調の増加
①睡眠時間の減少
<ブルーライトの影響>
スマホやタブレットの画面から出ているブルーライトと呼ばれる光は、夜の訪れを体に伝えるメラトニンという物質の分泌を抑えてしまうのです。
すなわち、夜になっているのに脳は昼間のままの感覚が続いてしまい睡眠の妨げになってしまうということです。
<刺激による脳の覚醒>
SNSやゲームなどのドーパミンと関係する刺激によって、脳が目覚めてしまうのです。
こうした原因によって、スマホやタブレットを夜に使うことで、子どもたちの睡眠時間は減少してしまうのです。
このことについては、スマホを寝室に置いている子どもの方が、そうでない子どもよりも1時間も睡眠時間が短いという調査結果が示されています。
②報酬を我慢できなくなる
子どもたちの脳は、我慢するという機能がまだ発達していません。そんな子どもたちに脳の報酬系を刺激し続けるSNSなどを使わせることは、大人以上に危険な状況に追い込むことになってしまうということです。
「今の子どもはすぐに上達できないとやめてしまう」という音楽教師の話を取り上げながら、クラシック系の楽器を習う生徒の数が著しく減少してきたのも「報酬を我慢できなくなってきている」1つの兆候だとしています。
③精神不調の増加
スエーデンでは、10歳〜17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者のの割合がここ10年で倍増し、アメリカでもうつの診断を受けたティーンエイジャーは7年で6倍に増えているとのことです。
SNS、ネットサーフィン、 YouTubeの動画、ゲームが精神的な不調につながっていたという調査結果を示しています。
『スマホ脳』から子どもを守るには
『スマホ脳』から子どもたちを守るためには、要約⑤「ハックされてしまうことへの対応策」で述べた、デジタルデトックスと運動がまず大切でしょう。
デジタルデトックス
iPhoneやiPadを創り出したスティーブ・ジョブズが実行していたように、子どもがデジタル機器に接する時間は、制限することが大切なのだと思います。
子ども用として使わせるタブレット類にはペアレンタルコントロールの設定をすべきだと改めて感じました。
iPadペアレンタルコントロール設定方法
Windows10ファミリー機能でタブレットの使用時間を制限
また、タブレット側の設定と合わせて、家庭でのルール作りがとても大切です。
ルール作りの一番のコツは、スマホにしてもタブレットにしても、購入する前に親子で決めておくことです。
タブレット購入時のルール作り
運動
筆者はカリフォルニア大学神経科学教授マイケル・ガザニガ教授の言葉を引用しています。
”脳は身体を動かすためにできている。そこを理解しなければ、多くの失敗を重ねることになるだろう。”
ーマイケル・ガザニガ カリフォルニア大学神経科学教授
デジタル情報の洪水に溺れそうになっている今、運動は最善の方法だと言っています。
スマホやタブレットを使う時間を先に減らしてから運動を増やすのか、運動する機会を増やすことでスマホやタブレットを使う時間を減らすのか、それは各家庭のライフスタイルにもよるのだと思います。
でも、デジタルデトックスと運動の両方にしっかりと向き合っていくことは、子どもたちの未来のためにも絶対に必要なことではないでしょうか。
じゃあどうする? まとめ
本屋で何気なく手にとった『スマホ脳』ですが、読んでみると子育て中のパパやママにも知って欲しい内容ばかりでした。
スマホもタブレットもパソコンも、これからの社会にはなくてはならないものです。
だからこそ、子どもたちにはその使い方をしっかりと学んでほしいなとつくづく感じてしまいました。
是非、子どもたちがスマホやタブレットの上手な使い手になってほしいなと心から祈っています。
本屋さんでこの本を見かけたら、是非手にとってパラパラとページをめくってみてくださいね。
著者 アンデシュ・ハンセンについて
著者:アンデシュ・ハンセン
1974年生まれ。
スェーデン・ストックホルム出身。
前作『一流の頭脳』が実行1000万人のスェーデンで60万部の大ベストセラーとなり、世界的人気を得た精神科医。
名門カロリンスカ医科大学で医学を学び、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得。
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